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賃貸人による立退き要求

2020/06/10 18:00
この記事の監修者
道下 剣志郎
道下 剣志郎
SAKURA法律事務所 弁護士(第一東京弁護士会)
宮本 武明
宮本 武明
SAKURA法律事務所 弁護士(第二東京弁護士会)

1 賃貸人からの立退き要求

賃貸借物件のオーナーから、契約期間満了による退去を求められた場合、退去に応じなければならないかどうかを決めるうえで重要なポイントとなるのが、賃貸借契約が定期借家契約なのか、普通借家契約(定期借家契約でない建物の賃貸借契約を普通借家契約といいます。)なのかという点です。

定期借家契約であれば、契約終了の1年前から6カ月前までの間に退去の通知が届いていた場合は、契約満了日をもって賃貸借契約は終了することになります。期間内に通知が届いている場合は、貸主と再契約について交渉することになります。

普通借家契約の場合は、「正当の事由」がなければオーナーが解約の申入れをしても契約は終了しません。 

2 定期借家契約と普通借家契約 

定期借家契約とは、「契約の更新がない」ことをあらかじめ合意して締結した建物の賃貸借契約をいいます。

通常は、契約書の標題に「定期借家契約」と明記があるはずです。また、契約書とは別に、契約の更新がなく、期間の満了により賃貸借契約が終了する旨を記載した書面が交付されます。こちらの書面がない、又はその交付が契約の締結に先立っていない場合、契約は定期借家契約としては無効で、普通借家契約として効力を有することになります。

普通借家契約には、期間を定めたものと定めていないものがありますが、いずれについても、契約を終了するためには、借地借家法により、正当事由の存在が求められています。

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3 定期借家契約の終了 

前述したとおり、定期借家契約については、契約終了の1年前から6カ月前までの間に退去の通知が届いていた場合は、契約満了日をもって賃貸借契約は終了することになります。

終了通知の出し忘れがあった場合は、契約書上の満了日ではなく、当該通知の到着日から6カ月が経過した時点で契約が終了します。

なお、定期借家契約の期間について、特に法律上制限はないですが、契約期間が1年未満の場合には、特に通知なく契約は終了します。定期借家契約については、借主は立退料を受領できず、また、退去を拒むこともできません。

契約期間の延長を希望する場合は、法律上契約期間延長の主張をする根拠はないので、お願いベースでオーナーと協議することになります。

4 普通借家契約の終了

借地借家法は、賃貸借契約について、借主に有利に民法の規定を修正しています。その代表例が、貸主側から契約を終了する際に「正当事由」が求められていることです。

正当事由とは、判例によれば、「賃貸借を終了させ明渡を求めることが、社会通念に照らして妥当と認められる理由」です。

前述した定期借家契約を除き、建物の賃貸借契約について、契約を終了するには「正当事由」が求められています。正当事由の存否は、テナント側の事情、オーナー側の事情、立退料の額等、諸般の事情を考慮して決定されることになります。

テナント側の事情として、例えば、事業が軌道に乗っており、代替の店舗では事業の継続が困難であれば、正当事由は認められにくくなります。

オーナー側の事情として、オーナーが緊急で建物を必要とする理由が強ければ強いほど正当事由が認められ易くなります。例えば、物件が住居用の物件で、オーナーやその家族が当該物件に居住する必要があり、他に物件がない場合は、正当事由は認められやすくなります。また、建物が老朽化しており、修繕、再開発が必要で、その必要性が差し迫っている場合、正当事由は認められ易くなると考えられます。

立退料については、相場と比較しつつ、一般に高額であればあるほど正当事由が認められやすくなります。

その他にも、諸々の事情が考慮されて正当事由の存否が決定されることになり、例えば、マルチテナントの物件で、他のテナントについて退去済であれば、正当事由は認められやすくなります。

以上のとおり、正当事由の存否については諸々の事情が考慮され、判断が難しい場合も多いです。争いとなった場合は、弁護士を通じた交渉による解決が望ましいといえます。 

この記事の監修者
道下 剣志郎
道下 剣志郎 SAKURA法律事務所 弁護士(第一東京弁護士会)
一橋大学法学部法律学科卒業。慶應義塾大学法科大学院法務研究科卒業。日本最大の法律事務所である西村あさひ法律事務所に勤務後、SAKURA法律事務所開業。会社法・金商法をはじめとする企業法務全般を手掛け、国内外のM&A、企業間の訴訟案件、危機管理案件、コーポレート・ガバナンス、株主総会対応等、幅広い案件を取り扱う。
宮本 武明
宮本 武明 SAKURA法律事務所 弁護士(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。慶應義塾大学法科大学院法務研究科卒業。4大法律事務所の1つであるアンダーソン・毛利・友常法律事務所に勤務後、SAKURA法律事務所開業。広くファイナンス分野を業務分野とし、資産運用会社への出向経験を活かして、上場支援、コンプライアンス関連業務、M&A、コーポレート・ガバナンス等の案件に従事するほか、訴訟案件や一般企業法務案件も担当する。
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