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並行輸入品の適法性

2020/08/19 17:50
この記事の監修者
道下 剣志郎
道下 剣志郎
SAKURA法律事務所 弁護士(第一東京弁護士会)
宮本 武明
宮本 武明
SAKURA法律事務所 弁護士(第二東京弁護士会)

Q: 当社は、外国製品を正規で取り扱う代理店で、当該外国製品の修理等を行っています。近年、並行輸入された製品に関する修理の依頼等が増えてきていますが、正規のルートをたどっていないため、そのような商品の修理は断りたいと思っています。法的に問題はありますか。

A: 正規の取扱店以外に、①当該製品の修理が著しく困難である場合や、②修理に必要な部品の入手が著しく困難である場合に、修理の拒否や部品の販売を拒否した場合、不公正な取引方法と認められて独占禁止法違反とされる可能性があるため注意が必要です。

1 正規輸入品と並行輸入品

ブランド物などに代表されますが、正規輸入品と並行輸入品という概念があります。そもそも正規輸入品とは、外国のメーカーが正規の代理店やライセンス企業を利用して直接に日本に販売されたもの、すなわち、正規のルートで日本に輸入されたものを言います。

他方で、並行輸入品とは正規輸入品以外のもの、すなわち海外のメーカーが指定する正規のルートではなく、他の企業が介在するなどして日本に輸入されたものです。

日本における正規の代理店としてはルイ・ヴィトンジャパン株式会社があります。これは一見して明らかなようにブランドのルイ・ヴィトンの正規代理店ですね。

2 並行輸入が行われる理由

ではなぜ、並行輸入が行われるのでしょうか。正規の代理店を通して購入すれば、ブランド品といえども模造品をつかまされる可能性は低く、正規輸入品を購入しない理由はないようにも思われます。

しかし、並行輸入品が流通する最大の理由は、正規輸入品と比べた時の価格が安いということでしょう。

当然、正規輸入品であればブランドから直接仕入れられていることから上記の通り、模造品が混入するリスクは低く、また、自社ブランドのネームバリューを維持する必要性があることから安価での販売は行いません。いわばブランド料が発生している状態だといえます。

他方で、並行輸入品は、模造品が混入する可能性が全くないとはいえないものの、正規輸入品と異なり、自社ブランドのネームバリューを維持するというインセンティブが必ずしも働くわけではなく、あくまでも為替の値動きや関税率などに応じて安価に輸入して、正規輸入品よりも安価に販売することができます。それ以外にも、正規輸入品としては日本国内に輸入されていないようなものも、並行輸入品として輸入すれば国内で流通させることができるというメリットもあります。

このようなメリットに対して、代替品に制限があることから返品や交換ができなかったり、メンテナンス等を受けられなかったりといったデメリットが考えられます。実際、並行輸入品を正規の代理店に持ち込んでも正規輸入品ではないということを理由として、修理や部品の販売を拒絶されるということも過去にはありました。

下記のパーカー万年筆事件の判決がなされるまでは、並行輸入品は違法と考えられていたこともあり、このようなサービス提供の拒絶も適法と考えられていたのです。

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3 パーカー万年筆事件

ではここで、上記のパーカー万年筆事件について簡単に紹介します。

事案は、万年筆の製造販売を行うPARKER社が日本において「PARKER」の商標権を保有していました。Y社はPARKER社との間で日本国内での同商標権の専用使用権に関するライセンス契約を締結しており、日本国内において同商標権を利用して万年筆の販売をしていました。それに対して、香港からPARKER社の万年筆を輸入して販売することを考えたX社が、「Y社には当該PARKER社の万年筆の販売を差し止める権利はないことの確認」を求めた事件です。

この事件において、裁判所は、以下のような理由を述べつつ、並行輸入品が適法であることを認めています。

判決文(一部抜粋)

Yは米国から商標権者たるパーカー社において「PARKER」なる商標を附した製品を輸入し、これを国内で販売しているだけであり、日本において「PARKER」の商標を附した指定商品を製造しているものではないし、わが国においては相当以前から「PARKER」の商標を附した万年筆といえば、右商品は専らパーカー社の製造販売にかかる舶来品の標識として需要者に認識されていたことは公知の事実であり、そうだとすれば、前述のようにXの輸入販売しようとするパーカー社の製品とYの輸入販売するパーカー社の製品とは全く同一であって、その間に品質上些かの差異もない以上、「PARKER」の商標の附された指定商品がXによって輸入販売されても、需要者に商品の出所品質について誤認混同を生ぜしめる危険は全く生じないのであって、右商標の果す機能は少しも害されることがないと言うべきである。このように、右商標を附した商品に対する需要者の信頼が裏切られるおそれがないとすれば、少なくとも需要者の保護にかけるところはないのみならず、商標権者たるパーカー社の業務上の信用その他営業上の利益も損なわれないことは自明であろう。

すなわち、同判決は、「商標」の機能を、誰が製造・販売する商品であるかを明らかにして品質を保証することにあり、商標権者が独占的な商標の使用権を与えて第三者によって出所が不明な商品が販売されることで品質の保証が害されることを防ぐためである。しかし、本件の事案において、Y社とX社が販売する商品について、その性質に差は全くなく、商標の作用が害されることはないし、PARKER社の業務上の信用やその他営業上の利益も損なわれない、ということ理由に、並行輸入を適法と判断しました。

4 現在の独占禁止法

現在も、並行輸入品は認められています。公正取引委員会は、並行輸入品は価格競争を促進させる効果を有するという考えのもとで、並行輸入品を排除しないとしています。

「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」(平成29年6月16日改正)において、

[1]並行輸入業者が供給業者の海外における取引先に購入申込みをした場合に,当該取引先に対し,並行輸入業者への販売を中止するようにさせること

[2]並行輸入品の製品番号等によりその入手経路を探知し,これを供給業者又はその海外における取引先に通知する等の方法により,当該取引先に対し,並行輸入業者への販売を中止するようにさせること

はそれぞれ、契約対象商品の価格を維持するために行われる場合には,不公正な取引方法に該当し,違法となる旨が示されています(同指針 第2並行輸入の不当阻害 2独占禁止法上問題になる場合)。

この記事の監修者
道下 剣志郎
道下 剣志郎 SAKURA法律事務所 弁護士(第一東京弁護士会)
一橋大学法学部法律学科卒業。慶應義塾大学法科大学院法務研究科卒業。日本最大の法律事務所である西村あさひ法律事務所に勤務後、SAKURA法律事務所開業。会社法・金商法をはじめとする企業法務全般を手掛け、国内外のM&A、企業間の訴訟案件、危機管理案件、コーポレート・ガバナンス、株主総会対応等、幅広い案件を取り扱う。
宮本 武明
宮本 武明 SAKURA法律事務所 弁護士(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。慶應義塾大学法科大学院法務研究科卒業。4大法律事務所の1つであるアンダーソン・毛利・友常法律事務所に勤務後、SAKURA法律事務所開業。広くファイナンス分野を業務分野とし、資産運用会社への出向経験を活かして、上場支援、コンプライアンス関連業務、M&A、コーポレート・ガバナンス等の案件に従事するほか、訴訟案件や一般企業法務案件も担当する。
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