弁護士への質問を投稿できるようになりました!
詳しい使い方を見る

約束手形の裏書について

2020/06/10 18:00
この記事の監修者
道下 剣志郎
道下 剣志郎
SAKURA法律事務所 弁護士(第一東京弁護士会)
宮本 武明
宮本 武明
SAKURA法律事務所 弁護士(第二東京弁護士会)

1 約束手形について

企業と企業が取引をする際、現金での取引が行われることはあまりありません。理由としては、買い手の企業の資金繰りの必要性があるからです。商品やサービスの受け取りと同時に現金での支払いを行うには、代金を現金で保有している必要があります。

代金分の現金はないものの、近い将来に入ってくる現金を裏付けとして仕入れがしたい場合や、代金分の現金はあるものの、支払いをすることで資金繰りが厳しくなるという場合、支払いを先延ばしにしておけば、その時点における手持ちの現金を減らすことなく経営の継続が可能です。そこで利用されるのが約束手形取引です。

約束手形とは、手形を発行する者が、手形を受け取る者に対して、一定の期日に一定の金額を支払うことを約束する内容の有価証券のことです。 売掛けを確実なものにするための書面といってもいいでしょう。 

なお、約束手形と似たものとして小切手があげられます。約束手形も小切手も、記載された金額を支払うという点では同じです。しかし、約束手形は支払期日に指定があるので、後述する裏書譲渡の場合を除き、小切手のようにすぐに換金することは出来ません。小切手については、取引銀行に持ち込むことで、当座預金残高に不足がなければ、即座に現金化が可能です。

undefined

2 裏書の意味 

上述のとおり、商品やサービスの買手にとっては、支払いの先延ばしができるので、大きなメリットがあります。

他方、売手にとっては、手形取引をすることによって、商品やサービスの代金の回収が遅れてしまいます。もっとも、取得した手形を譲渡することで手形に記載された支払い期日よりも早期に代金の回収を図ることができます。これを手形の裏書譲渡といいます。しかし、この裏書の意味を正確に理解しておかないと、痛い思いをすることになります。 

例えば、知人から手形を交付されて、その手形が、甲社が乙社の野菜ジュースを購入する際に甲社が乙社に宛てて発行した手形であったとします。この場合、甲社から金銭の回収を受ける権利の交付を受けたことになります。 

つまり、交付を受けた手形をもっていれば、手形に記載された支払期日に甲社から手形に記載された金額を支払ってもらうことができます。これを手形の移転的効力といいます。

ここまではよいのですが、交付を受けた手形を、さらに誰かに交付(裏書譲渡)した場合はどうなるでしょうか。 

この場合、手形を持っている人に対し、手形に記載された額面の金額を、甲社と一緒に支払う義務を負い、これを手形の担保的効力といいます。つまり、甲社の支払債務を連帯的に保証したのと同じような効果が生ずることになります。 

手形は原則として誰に譲渡しても問題ないので、手形を裏書譲渡すると、その手形が転転流通し、場合によっては暴力団に対して交付されてしまうこともあります。その場合、手形の発行者が支払いできない場合、裏書をした者に対して暴力団から請求がくることがあり得ます。手形を裏書譲渡する場合は、このようなリスクを念頭に置く必要があります。

3 白地手形について

前述したとおり、手形の裏書譲渡にはリスクが伴います。手形の一部が白地(空欄)だった場合、そのような手形を白地手形といい、さらなるリスクが伴うことになります。 

手形は、①金額、②支払期日、③受取人、④振出日・振出地、⑤振出人署名がないと効力がなく、これらを絶対的記載事項といいます。 

しかし絶対的記載事項の一部が記入されていない手形があります。空欄となっていることには様々な理由があり、発行者の信用状態をカモフラージュすることなどが挙げられます。白地手形のままだと不完全な手形なので、受取人が補充するという約束をし、これを前提に振出人は白地手形を振り出します。

白地手形は多くの場合有効ですが、事実と異なる補充がなされることにより、トラブルが生じたり悪用されたりする危険性があるので、白地手形を用いた取引を行う際は注意が必要です。

この記事の監修者
道下 剣志郎
道下 剣志郎 SAKURA法律事務所 弁護士(第一東京弁護士会)
一橋大学法学部法律学科卒業。慶應義塾大学法科大学院法務研究科卒業。日本最大の法律事務所である西村あさひ法律事務所に勤務後、SAKURA法律事務所開業。会社法・金商法をはじめとする企業法務全般を手掛け、国内外のM&A、企業間の訴訟案件、危機管理案件、コーポレート・ガバナンス、株主総会対応等、幅広い案件を取り扱う。
宮本 武明
宮本 武明 SAKURA法律事務所 弁護士(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。慶應義塾大学法科大学院法務研究科卒業。4大法律事務所の1つであるアンダーソン・毛利・友常法律事務所に勤務後、SAKURA法律事務所開業。広くファイナンス分野を業務分野とし、資産運用会社への出向経験を活かして、上場支援、コンプライアンス関連業務、M&A、コーポレート・ガバナンス等の案件に従事するほか、訴訟案件や一般企業法務案件も担当する。
回答可能な弁護士