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元ミスターコンテスト日本代表と語る、美容スタートアップの法環境

LegalOnlineの弁護士がさまざまな業界のゲストとざっくばらんに対談し、現行の法律に関する悩みや、現代社会と法的ルールとのズレなど、多様な角度から社会の法制度を捉えていく連載企画。
初回は「美容スタートアップ×法律」をテーマに、元ミスター・スプラナショナル日本代表で、株式会社JustFit代表取締役の植草孝規氏を迎える。チャットボットを通じた化粧品のリコメンドサービス「MIGNON」を展開するに至った経緯や、美容業界とスタートアップを取り巻く法環境について、Legal Online 取締役の宮本武明が伺った。

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メイクの必要に迫られたことが、
リコメンドサービスの発足につながった

宮本武明本日はよろしくお願いします! 早速恐れ入りますが、簡単に自己紹介をお願いできますか?

植草孝規氏(以下、敬称略):よろしくお願いします! 植草孝規です。2017年にミスター・スプラナショナル(※1)へ出場し、現在は株式会社JustFitの代表取締役を務めています。チャットボットを使って、個々人の肌にあったコスメを紹介する「MIGNON」というサービスを開発・運営しています。

※1編集部注:2016年にポーランドで始まった、世界の魅力ある男性を発掘するコンテスト。同大会主催が2009年から開いている「Miss Supranational」は、2018年時点で120カ国以上にライブ配信をする大きなビューティ・ページェントとなっている

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宮本:植草さんと言えば、ミスターコンテストですよね。結果はどうだったんですか?

植草:日本大会では勝つことができて、日本代表に選んでいただきました。世界では13位でしたね。

宮本:なるほど。実はちょっとネットで拝見しました、上裸の写真を(笑)

植草:お恥ずかしい(笑)

経緯としては、六本木のクラブにプロのダンサーとして入っていた黒人のお兄さんとたまたま知り合いまして。後からわかったんですけど、彼、はるな愛さんなどをトランスジェンダーの世界大会で優勝させたウォーキングトレーナーだったんですね。

自分が英語も話せるし体もいけそうだからということで、その彼からコンテストへの出場を勧められたんですよ。で、気がついたらいつの間にかエントリーしていたという。

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宮本:きっかけはスカウトだったんですね。出場されて、驚いたことなどはありましたか?

植草:日本ではミスターのコンテストってあまり知られていないと思うんですけど、地域によっては国を挙げて応援するところもあって。インド代表などは、数千人規模の壮行会が開かれたそうです。ミスター・インドがスーツケース14個で来ていたのは衝撃でした。

宮本:すごい量ですね! 服とかがたくさん入ってるんですか?

植草:そうですね。全部、企業から支給されているそうです。インド代表などはスポンサーがたくさんついているので、大荷物なんだと思いますね。

宮本:ほかに、苦労したことや衝撃だったことはありますか?

植草:苦労したのは体づくりくらいでした。世界大会となると、まったく違うバックグラウンドを持った人たちの中にいきなり飛び込むので、一般的には戸惑う人が多いみたいなんです。 自分の場合は元々バックパッカーで、言語の壁もなかったので、そのあたりは問題なく。

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ただ、個人的に困ったのはメイク。ミスターの大会ではヘアメイクさんもつきますが、ステージに上がるため、自分でもメイクを身につける必要がありました。でも、自分自身は化粧についてなにも知らなくて。以前、ミスの大会を手伝ったときに知り合った女の子が化粧品に詳しい人だったので、いろいろアドバイスをもらったんです。

それが、世界大会に出るうえで「自分の肌質や使用目的の場合、どんな基準で商品を選んだらいいか」という参考になった。この経験とチャットボットをうまく組み合わせたら面白いんじゃないかと思って、「MIGNON」をスタートさせたんです。

宮本:なるほど! ホント、クラブに行ってよかったですね(笑)

植草:そうですね。クラブ反対とかの声も聞くんですけど、自分としてはちょっと、反対に反対してますね(笑)

ミス&ミスターを悩ませる「契約書」の存在

宮本:コンテスト出場の経験を通して 、法律問題に直面したことはありましたか?

植草:自分が出場した大会で問題が発生することはなかったのですが、他の大会や人によっては、契約周りが問題になりますね。ミスターもミスも、大会のときに運営側と契約を結ぶんですけど、ミスターの契約書がミスコンの使いまわしだったり、日付が正確じゃなかったりする。

宮本:運営側というのは、大会の?

植草:そうですね。大会はスポンサー企業によって支えられていますが、出場者は主に大会運営と契約書を交します。     

多くの大会では、出場後のタイトルを使って仕事をする場合、1〜2年くらいはお仕事の報酬を運営会社と折半します。でも、その権利周りについてちゃんと説明されていないことが多く、契約者側もよく理解しないままサインする。で、後から「そんなはずじゃなかった」と問題になるのはよく見ますね。

宮本:まあそうですよね。契約の合意って口頭でもできるので、書面がなかったり、取り決めが中途半端だったりしても、進めることはできてしまうんですよね。

植草:そうそう。特に最近は、契約書の重要性を感じる。自分自身、1年半くらいしか社会人経験がない段階で会社を立ち上げたんですよ。で、始めてから「これって重要だったのか」と後から気づかされることも多くて。

特にスタートアップは大学の友だちと一緒に始めるケースも多いと思うんですけど、お金がない段階だと、最初から弁護士にちゃんと契約書を作ってもらうことはなかなかできない。ただ、それがないと後から問題が発生することもあるだろうな、と。

宮本:たしかにそうですね。契約の締結は口頭でもできるんですけど、トラブルになったとき、書面がないと「なにをもとに解決するのか」がわからなくなってしまいます。後々なにか起こったときのためにも、契約書は作っておくのが望ましいですね。

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植草:ちなみに海外でスタートアップを立ち上げる人たちは、ビジネスだけでなく、日常での契約も重視する人が増えてきていると思います。婚前契約とか。

宮本:ちょっと前に作りましたよ、婚前契約書。僕のではありませんが(笑)

ご指摘のとおり、欧米などでは婚前契約がブームです。結婚生活におけるトラブルを回避するべく、夫婦間のルールを事前に決めておく契約で、家事や育児、親の世話や生活費の使い方などが取り決められますね。

植草:自分も今年30歳で、結婚をある程度意識する年齢になってきましたが、日本だと婚前契約はメジャーじゃない。恋人に契約書を持っていったとき、それが理由で破局になったという話も聞くので、そういう「契約自体のリスク」もあるんだな、と思いました。

宮本:僕もすごく関心があるテーマですね。婚前契約って、離婚したときのことも取り決めるので、冷めた感じがしないでもない。そういうあたりが、日本ではまだあまり受け入れられていない印象ですね。

とはいえ、現に国内でも婚前契約の依頼は入ってきているので、ビジネスに限らず、取り決めを書面に残すことの重要性がすこしずつ広まっているのかなと思います。

美容スタートアップが抱える「法律相談のハードル」

宮本:植草さんが事業を始めてどれくらい経ちますか?

植草:美容をスタートさせてからは1年半くらいですね。会社自体は3期目に入っています。

宮本:ビジネスをするにあたって、いろんな法律問題に直面することがあると思いますが、どのように対応されていますか。

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植草:化粧品検定1級の資格を取ったり、勉強はしています。美容だと薬機法(※2)などが深く関わってくるんですけど、学んでみると、世の中のいろんなブログや会社のメディアが、薬機法についてすれすれな印象を受けますね。

※2編集部注:旧薬事法。医薬品や医療機器、化粧品などに関する有効性や安全性を保つための法律。

宮本:おっしゃるとおりですね。美容業界に直接関わってくる法律としては、ご指摘の薬機法や、景表法(※3)があります。化粧品の製造、広告、それぞれの場面で規制がありますが、やっぱり難しいんですよね。国民の健康とビジネスの成功が衝突する場面があるので、どのように調和させるのかうまく考える必要があります。

※3編集部注:景品表示法。誇大広告など、消費者が商品の内容を誤解するような表示を規制する法律。

化粧品業界は法規制が厳しい分野ですが、誰か専門家に相談はされましたか?

植草:今までは聞けませんでした。事業をスタートさせてからは、法律に対してどこまでシビアにいけばいいのかとか、どういった場合にどういう問題が発生するのかとか、そのあたりのリスクヘッジの取り方について、ちょっと心配になりましたね。

宮本:事業にどのような規制があり、どうすればそれを回避できるかという部分は、どうしても専門家の意見が必要になってきますよね。知り合いに弁護士の方はいらっしゃいますか?

植草:直接の知り合いにはいません。これは法的にどうなんだろうとか、これはどう解決したらいいんだろう、という場面には遭遇していたんですが、なかなか相談はできませんでした。

宮本:弁護士に相談するにあたって、スタートアップの経営者として、なにかハードルみたいなものを感じられましたか?

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植草:どこからが弁護士に相談すべき内容なのかがわからない、というのがそもそものハードルでした。

限られたお金と時間の中で、どこから弁護士に相談して、きちんとした法的な線引きをすべきかわからない。また相談するにも、ネットで調べると価格にかなりの開きがあって、相場感を知らない人間からすると、弁護士を選ぶ基準もわからないのが正直なところです。     

宮本:なるほど。

植草:学生のスタートアップなど、法的な知識や、その重要性を十分に学ばないまま起業するケースも多いと思います。知らない人からすると、法律の壁がどれくらい高いのかもわからない。結果として、「なにか重大な問題が発生したときに相談しないといけない」くらいの認識になってしまう人は結構いるんじゃないかと。

宮本:特になにか大きな問題が起きていないと、相談もしにくいですよね。もっとも、大きな問題が起きないように日常的な業務にアドバイスすること、つまり予防法務も弁護士の重要な役割です。化粧品業界もそうですが、消費者の利益と事業者の利益があって、これらのバランスをとるべくいろんな法律が存在しています。ただ、この法規制が複雑だったりするので、可能な限り弁護士からアドバイスをもらいつつ進めるのが望ましいですね。

植草さんの事業や、いろんなスタートアップが実現しようとしていることが、法規制で阻まれてしまうのはよくないと思います。そのようなことがないように、もっと気軽に弁護士へ相談できる環境が必要だと考えています。身近に弁護士の方がいればもちろんご相談いただきたいですし、僕たちもネット上で多くの弁護士に相談できるサービスを作っていますので、ぜひ覗いてみてください。本日はありがとうございました!

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植草 孝規
Uekusa Takanori
株式会社JustFit 代表取締役

バックパッカーとして世界50カ国以上を旅する大学時代を経て、2017年にMister Supranationalへ出場。日本代表となり、世界大会TOP20入りを果たす。同年、株式会社JustFitを創業。ミスターコンテストへ参加する際、メイクの必要に迫られ、コスメ選びに困ったことから、チャットボットを通じた化粧品のリコメンドサービス「MIGNON」を発足。
MIGNON: https://mignon.fun
チャットボット: https://line.me/R/ti/p/%40058zvzwh 

宮本 武明
Miyamoto Takeaki
株式会社Legal Online 取締役 COO 弁護士
慶應義塾大学法科大学院を卒業後、2016年に弁護士登録。アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て、2020年にSAKURA法律事務所を創業。同年、プロフェッショナルを身近にすることを通じた自由で公正な社会の実現のため、道下剣志郎と株式会社Legal Onlineを共同創業。
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