イメージ・キャラクターの著作権の使用について

2020/06/10 09:00
この記事の監修者
道下 剣志郎
道下 剣志郎
SAKURA法律事務所 弁護士(第一東京弁護士会)
宮本 武明
宮本 武明
SAKURA法律事務所 弁護士(第二東京弁護士会)

1 イメージ・キャラクターの保護の必要性 

街や電車等の交通機関であたりを見渡すと、多くの企業のイメージ・キャラクターが目にとまります。 

イメージ・キャラクターには様々な効果があり、認知の容易さや、親しみやすさを利用して、会社の製品、サービスの認知度や好感度を向上させるなど、イメージ・キャラクターが会社にもたらす恩恵は大きいものといえます。 

もっとも、イメージ・キャラクターの認知度が高まるほど、模倣のリスクにもさらされ、悪質な模倣がなされるとイメージ・キャラクターと結びついた会社の商品、サービスのイメージも悪くなってしまうので、イメージ・キャラクターを保護する必要性は大きいものと思います。

よって、イメージ・キャラクターについて発生する権利、その帰属主体等について理解しておくことの重要性は高いです。 

2 イメージ・キャラクターの著作権

イメージ・キャラクターを保護する権利としては、まず、著作権が考えられます。 

著作権とは、「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」(著作権法第2条第1項第1号)という権利で、著作者に帰属する権利です。

著作権が発生する場合、その効果として重要なのが、権利を侵害する者に対して、著作者が差止請求(同法 第112条第1項)や、損害賠償請求(民法第709条)ができる点です。 

イメージ・キャラクターについては、思想または感情を創作的に表現した美術とされ、著作者に著作権が認められることが通常と思います。

著作権の便利な点は、それを発生させるための手続きや費用が不要な点です。これを無方式主義といいます。よって、イメージ・キャラクターの著作者は、イメージ・キャラクターが創作された時点で発生します。 

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3 イメージ・キャラクターの著作権の帰属主体

イメージ・キャラクターの著作権について検討しておく必要があるのが、その帰属主体です。 

イメージ・キャラクターの著作権は、それを創作した会社の従業員に帰属するようにも思えますが、法は一定の場合、会社に帰属するものとしています。会社のものとなる要件は著作権法15条1項に定められており、以下のとおりです。

会社の発意に基づいて作られ、会社の業務に従事する者が職務上作成し、会社が著作したものとして公表する著作物で、著作物を創作した時に契約や就業規則等で従業員を著作者とする旨の定めがない場合です。 

4 商標権の使用 

もっとも、著作権によるイメージ・キャラクターの保護は不十分な場合もあります。なぜなら、著作権侵害を理由に差止請求や損害賠償請求する場合、自社の著作物を侵害している表現物の、依拠性と類似性を立証することになり、これが容易でないことが通常です。これは著作権につき無方式主義が採用されているためです。

また、著作権では、イメージ・キャラクターの名称については保護されません。たとえば、不二家とは違う会社がキャンディをなめている女の子をペコちゃんと名付けても、不二家のペコちゃんについての著作権では差止請求できないことになります。

よって、商標権の活用も検討すべきです。商標とは、会社が自社の取り扱う製品、サービスを他社のものと区別するために使用するマークです。商標権は著作権と異なり、特許庁の審査を経て、登録がなされることで発生します。これを著作権の無方式主義と区別して方式主義といいます。商標登録すると、登録した商標の使用はもちろんのこと、類似の商標等についても使用を差し止めることができます。また、通常名称についても保護されることになります。

この記事の監修者
道下 剣志郎
道下 剣志郎 SAKURA法律事務所 弁護士(第一東京弁護士会)
一橋大学法学部法律学科卒業。慶應義塾大学法科大学院法務研>究科卒業。日本最大の法律事務所である西村あさひ法律事務所に勤務後、SAKURA法律事務所開業。会社法・金商法をはじめとする企業法務全般を手掛け、国内外のM&A、企業間の訴訟案件、危機管理案件、コーポレート・ガバナンス、株主総会対応等、幅広い案件を取り扱う。
宮本 武明
宮本 武明 SAKURA法律事務所 弁護士(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。慶應義塾大学法科大学院法務研>究科卒業。4大法律事務所の1つであるアンダーソン・毛利・友常法律事務所に勤務後、SAKURA法律事務所開業。広くファイナンス分野を業務分野とし、資産運用会社への出向経験を活かして、上場支援、コンプライ>アンス関連業務、M&A、コーポレート・ガバナンス等の案件に従事するほか、訴訟案件や一般企業法務案件も担当する。