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商標権とその効力について

2020/06/10 18:00
この記事の監修者
道下 剣志郎
道下 剣志郎
SAKURA法律事務所 弁護士(第一東京弁護士会)
宮本 武明
宮本 武明
SAKURA法律事務所 弁護士(第二東京弁護士会)

1 商標とは

商標とは、事業者が、自社の取り扱う商品やサービスを、他社の商品やサービスと区別するために使用するマークをいいます。

例えば、事業者Aの企業努力によって、自社の商品やサービスに対する研鑽を重ねることにより、事業者Aの商標Aに高品質というブランドイメージがつきます。そして、消費者は、この商標Aの高品質というブランドイメージに誘引されて、商品を購入します。

このように商標は、商品やサービスに顧客を誘引する重要な役割を担っています。そして、商標制度は、マークが有する自社商品を識別する力や信頼性を保護するものです。

2 商標権とは

1で説明したような、商品やサービスに使用されるマークを、法的権利として守るのが、商標権という知的財産権です。

商標には、文字、図形、記号、立体的形状やこれらを組み合わせたもの、動き商標、ホログラム商標、色彩のみからなる商標、音商標及び位置商標などがあります。

商標権を取得するためは、特許庁へ商標を出願して商標登録を受けることが必要です。

商標登録を受けないまま商標を使用している場合、先に他社が同じような商標の登録を受けていれば、その他社の商標権の侵害にあたる可能性があります。

また、商標を先に使用していたとしても、その商標が、自社の商品やサービスを表すものとして広く知られているといった事情がなければ、商標権の侵害にあたる可能性があります。

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3 商標権の登録について

商標権は、マーク及びそのマークを使用する商品やサービスの組合せで、一つの権利となるため、商標権を登録(=商標登録出願)する際には、商標登録を受けようとするマークとともに、そのマークを使用する商品又はサービスを指定することになります。

商標法では、一般的にサービスに該当する事柄を役務と呼び、指定した商品を指定商品、指定した役務を指定役務と呼びます。この指定商品及び指定役務によって、商標権の範囲が決定されます。

また、指定商品又は指定役務を記載する際には、商品・役務を一定の基準によって第1類~第45類までカテゴリー分けした区分も記載する必要があります。

そして、商標登録を受けるためには、特許庁に出願をすることが必要です。

なお、日本では、同一又は類似の商標の出願があった場合、その商標を先に使用していたか否かにかかわらず、先に出願した者に登録を認める先願主義という考え方を採用しています。

4 商標権の効力について

マークが商標として登録された場合、そのマークについては、商標権を有する者による独占的な使用が法的に認められることになります。具体的には、権利を侵害する者に対して、侵害行為の差し止め、損害賠償等を請求できるようになります。

この商標権は、設定登録の日から10年間に限り存続します。ただし、商標は、事業者の営業活動によって蓄積された信用を保護することを目的としていますので、存続期間の更新登録の申請によって10年の存続期間を何度でも更新できます。

なお、商標権は、日本国内においてのみ効力が及び、海外にはその効力は及びません。外国で事業を行う場合は、その国での権利を取得する必要があります。

5 商標の同一性・類似性の有無について

実務上、商標権を根拠に、ある会社が今まで使用してきたマークの使用を中止するよう、警告がなされることがしばしばあります。このような警告をされた場合、警告を受けた会社としては、まず、警告をした会社が有する商標権の存否とその内容を特許情報プラットフォーム(特許庁: https://www.j-platpat.inpit.go.jp/)で確認する必要があります。 

その上で、警告を受けた会社が使用するマークを、これを付す商品やサービスの内容まで含めて確認し、商標権のうちの禁止権の対象になり得る程度の類似性が存在するかどうかの検討をすべきです。

6 先使用権について

警告をした会社の登録商標と警告を受けた会社のマークに類似性が認められた場合でも、先使用権の成立が認められる場合には、当該マークを適法に使用することができます。

先使用権は、他者がした特許出願の時点で、その特許出願に係る発明の実施である事業やその事業の準備をしていた者に認められる権利です。

この先使用権は、他人の商標の出願前から、国内において、不正競争の目的なく、他者の登録商標と同一又は類似したマークを使用しており、かつ、当該商標が需要者の間に広く認識されている場合に認められます。

先使用権者は、他者の特許権を無償で実施し、事業を継続できるとすることにより、特許権者と先使用権者との間の公平が図られています。

よって、警告をした会社の登録商標と警告を受けた会社のマークに類似性が認められる場合であっても、警告を受けた会社が、他人の商標の出願前から、国内において、不正競争の目的なく、他者の登録商標と同一又は類似したマークを使用しており、かつ、当該商標が需要者の間に広く認識されている場合には、警告を受けた会社が使用するマークについて先使用権の成立が認められ、警告をした会社の禁止権の行使に対しても、当該マークの使用は適法であると主張できます。

7 権利の有効性について

警告をした会社の登録商標と警告を受けた会社のマークに類似性が認められた場合、上述した先使用権の主張以外に、そもそも、警告をした会社の登録商標は有効ではないとの主張をすることもできます。

具体的には、警告をした会社の登録商標は、商標法上の登録要件を充足せず無効である、全く使用されていないため取り消されるべきであるなどの主張が可能です。

上記のような主張が認められれば、警告をした会社の登録商標が無効になったり取消しの対象となったりするので、警告をした会社の主張は認められないことになります。

この記事の監修者
道下 剣志郎
道下 剣志郎 SAKURA法律事務所 弁護士(第一東京弁護士会)
一橋大学法学部法律学科卒業。慶應義塾大学法科大学院法務研究科卒業。日本最大の法律事務所である西村あさひ法律事務所に勤務後、SAKURA法律事務所開業。会社法・金商法をはじめとする企業法務全般を手掛け、国内外のM&A、企業間の訴訟案件、危機管理案件、コーポレート・ガバナンス、株主総会対応等、幅広い案件を取り扱う。
宮本 武明
宮本 武明 SAKURA法律事務所 弁護士(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。慶應義塾大学法科大学院法務研究科卒業。4大法律事務所の1つであるアンダーソン・毛利・友常法律事務所に勤務後、SAKURA法律事務所開業。広くファイナンス分野を業務分野とし、資産運用会社への出向経験を活かして、上場支援、コンプライアンス関連業務、M&A、コーポレート・ガバナンス等の案件に従事するほか、訴訟案件や一般企業法務案件も担当する。
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