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特別利害関係取締役

2021/04/22 18:39
この記事の監修者
道下 剣志郎
道下 剣志郎
SAKURA法律事務所 弁護士(第一東京弁護士会)
宮本 武明
宮本 武明
SAKURA法律事務所 弁護士(第二東京弁護士会)

Q: 特別利害関係を有する取締役が取締役会に参加していた場合、その決議の効力はどうなるのでしょうか?

A: 特別利害関係を有している取締役が決議に参加していた場合、そのような決議は原則として無効になります。しかし、例外的に有効と考えられる場合があります。特別利害関係を有する取締役が決議に参加してしまった場合には、そのような例外的な場合に該当しないかをまず検討するといいでしょう。

1. 特別利害関係取締役制度とは

会社法においては、「特別の利害関係を有する取締役」は、取締役会の決議に参加することはできないとされています(会社法第369条第2項)。

この規定は、取締役は会社に対して善管注意義務(会社法330条、民法644条)及び忠実義務(会社法第355条)を負っており、会社の利益に沿うような形で権限を行使することが必要になるところ、他方で取締役も人間ですので、取締役自身の利益に関連するような決議事項においては、必ずしも会社の利益のために行動を期待することはできません。

そのため、取締役が決議事項について特別の利害関係を有すると認められる場合には、(会社の利益を前提とした判断ができないと考えられるために)当該取締役は取締役会において議決に加わることができないとされています。

議決に加わることができないというのは、単に決議に参加することができないということにとどまらず、例えば意見の陳述(や代表取締役等の場合には議長として関与すること)も制限されることになります。これは、特別利害関係取締役がどのような形であれ議決に関与すれば、その影響が他の取締役に出て、忖度した結果になる可能性があると考えられるためです(利益を受ける人と面と向かってその議案について反対意見を述べるのは一般的に憚られると考えられるでしょう。)。

2. 特別利害関係取締役とは

それでは、そもそも「特別の利害関係を有する」取締役とはどのような取締役をいうのでしょうか。実際にどのような場合に特別の利害関係を有しているかについては裁判例が参考になります。

過去、特別の利害関係を有するとされたものには、例えば代表取締役の解職に関する決議を行う際の当該代表取締役が挙げられます。その他にも、競業取引を行おうとする場合や、利益相反取引を行おうとする場合の取締役は一般的に特別利害関係を有する取締役に該当すると考えられています。

裁判例等においては、特別の利害関係を有する範囲を比較的狭く解することが多いように思われますが、判断の基礎には上記の通り特別の利害関係を有する取締役においては適切な業務の執行を期待することができないという考えがあるといえます。

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3. 決議の効力

では、かかる規制に違反してなされた決議の効力はどうなるのでしょうか。取締役会の決議について瑕疵がある場合には、原則として無効となります。しかし、取締役会の決議は会社の意思決定の根底になることが多く、そのような決議の効力を軽微な瑕疵があるというだけで否定することになると、取締役会において決議がなされたということを信頼して取引関係に入った第三者の利益を害することになりかねません。

会社法下の事例ではありませんが、参考になるものとして、最判昭和54年2月23日が挙げられます。その事例は、企業組合の理事が決議事項について特別の利害関係を有するにも関わらず決議に参加した場合に、当該決議の効力が争われたものです。当該事例においては、当該理事が決議に参加したものであっても、その理事を除外してもなお議決の成立に必要な多数が存する場合には、当該決議の効力は否定されない、と判断されました。

つまり、当該理事が仮に参加していなかったとしても、同じ内容の決議がなされたであろうと認められる場合には決議は無効にならない、という判断がなされたということになります。

この判例は、取締役に関するものではありませんが、意思決定に関するものとして現在でも引用等がされるものであり、会社法下においても十分に参考になるものであると考えられます。

この記事の監修者
道下 剣志郎
道下 剣志郎 SAKURA法律事務所 弁護士(第一東京弁護士会)
一橋大学法学部法律学科卒業。慶應義塾大学法科大学院法務研究科卒業。日本最大の法律事務所である西村あさひ法律事務所に勤務後、SAKURA法律事務所開業。会社法・金商法をはじめとする企業法務全般を手掛け、国内外のM&A、企業間の訴訟案件、危機管理案件、コーポレート・ガバナンス、株主総会対応等、幅広い案件を取り扱う。
宮本 武明
宮本 武明 SAKURA法律事務所 弁護士(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。慶應義塾大学法科大学院法務研究科卒業。4大法律事務所の1つであるアンダーソン・毛利・友常法律事務所に勤務後、SAKURA法律事務所開業。広くファイナンス分野を業務分野とし、資産運用会社への出向経験を活かして、上場支援、コンプライアンス関連業務、M&A、コーポレート・ガバナンス等の案件に従事するほか、訴訟案件や一般企業法務案件も担当する。
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