景品規制について

2020/06/10 09:00
この記事の監修者
道下 剣志郎
道下 剣志郎
SAKURA法律事務所 弁護士(第一東京弁護士会)
宮本 武明
宮本 武明
SAKURA法律事務所 弁護士(第二東京弁護士会)

1 景品表示法の目的 

景品表示法は、独占禁止法の特別法にあたる法律です。独占禁止法は、「不当に競争者の顧客を自己と取引するように誘引し、または強制すること(法第2条第9項第6号ハ)」について、「不公正は取引方法」としており、この内容が景品表示法において具体化されています。

景品表示法の規制対象は大きく二つに分類することができます。「表示規制」と「景品規制」です。これら二つの規制により、商品及び役務の取引に関連する不当な景品類及び表示による顧客の誘引を防止し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれのある行為を制限又は禁止し、一般消費者の利益を保護することを目的としています。

「表示規制」については、「有利誤認」表示や、「優良誤認」表示を規制しています。消費者に、実際の商品の品質よりも優良だと誤解させたり、安いと誤解を招かせたりするような表示がこれらに当たり、違反があった場合、消費者庁や各都道府県は、広告の表示主体に対し立ち入り検査を行ったり、広告を差し止めたりする権限があります。 

もう一つの規制が「景品規制」です。これは、企業等による景品類の提供を規制しています。

景品類の交付を受けることは、消費者側としては、不利な点はないようにも思えますが、企業等が景品を過大に提供することにより、消費者が景品に惑わされて質の悪いものや割高なものを買わされてしまうのは、消費者にとって不利益となります。また、景品による競争が盛んになると、企業等は商品やサービスでの競争に力を入れなくなり、これも消費者の不利益につながってしまいます。

そこで、景品表示法は、景品の総額等を規制することで、一般消費者の利益を保護し、過大景品による不健全な競争の発生を予防しています。

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2 景品規制 

まず、「景品規制」の対象となる「景品等」の定義について整理すると、景品表示法第2条第3項において、「顧客を誘引するための手段として、その方法が直接的であるか間接的であるかを問わず、くじの方法によるかどうかを問わず、事業者が自己の供給する商品又は役務の取引に付随して相手方に提供する物品、金銭その他の経済上の利益であって、内閣総理大臣が指定するもの」とされています。

内閣総理大臣は、本条に基づく指定として、公正取引委員会を通じて、「物品、金銭、金券、供応」などを指定しています。要するに、金銭的価値のあるもの全般です。 

「景品等」を上記のとおり定義した上で、景品表示法は、景品を3つに分類し、それぞれ異なる規制を定めています。 (1)一般懸賞に関するもの,(2)共同懸賞に関するもの,(3)総付景品に関するものです。景品の規制に違反する行為があった場合、公正取引委員会は、関係者への事情聴取を実施し、違反行為の禁止を命じるなどの排除命令を発令することができます。 

3 一般懸賞に対する規制 

一般懸賞は、消費者に対し、くじ等の偶然性、特定行為の優劣等によって景品類を提供する行為のことをいいます。例えば、一部の商品にのみ外形上それがわからない形で景品類が添付してある場合や、パズル、クイズ等の回答の正誤により景品を提供する場合等があります。懸賞による取引価格が5,000円未満の場合は、景品の最高額が取引価格の20倍に制限されており、5,000円以上の場合は10万円に制限されています。総額は売上予定総額の2%に制限されています。

4 共同懸賞に対する規制 

共同懸賞は、消費者に対し、一定の地域や業界企業等が共同して景品類を提供する行為のことをいいます。例えば、中元・歳末セールを商店街が実施する場合などです。取引価格に関わらず、景品の最高額は30万円、総額は売上予定総額の3%に制限されています。

5 総付懸賞に対する規制 

総付景品は、懸賞によらず、サービスを利用したり、来店したりした人にもれなく景品類を提供する行為のことをいいます。取引価格が1,000円未満の場合は、景品の最高額が200円に制限されており、1,000円以上の場合は取引価格の10分の2に制限されています。

この記事の監修者
道下 剣志郎
道下 剣志郎 SAKURA法律事務所 弁護士(第一東京弁護士会)
一橋大学法学部法律学科卒業。慶應義塾大学法科大学院法務研>究科卒業。日本最大の法律事務所である西村あさひ法律事務所に勤務後、SAKURA法律事務所開業。会社法・金商法をはじめとする企業法務全般を手掛け、国内外のM&A、企業間の訴訟案件、危機管理案件、コーポレート・ガバナンス、株主総会対応等、幅広い案件を取り扱う。
宮本 武明
宮本 武明 SAKURA法律事務所 弁護士(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。慶應義塾大学法科大学院法務研>究科卒業。4大法律事務所の1つであるアンダーソン・毛利・友常法律事務所に勤務後、SAKURA法律事務所開業。広くファイナンス分野を業務分野とし、資産運用会社への出向経験を活かして、上場支援、コンプライ>アンス関連業務、M&A、コーポレート・ガバナンス等の案件に従事するほか、訴訟案件や一般企業法務案件も担当する。